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9-20 災難 2

last update Huling Na-update: 2025-06-07 06:49:17

20時――

「大変申し訳ございませんでした!」

騒ぎがあって呼びつけられたのか、この病院の事務長が翔と修也に頭を下げてきた。

「全くだ。一体この病院はどうなっているんだ? あんな頭のいかれた看護師を雇っているなんておかしいだろう!?」

翔は怒りを抑えることも無く、声を荒げた。

「はい、それは本当に大変申し訳なく思っております。あの看護師は懲戒休職の措置を取りました。お詫びとして特別個室の料金を全額免除させて頂きますので、なにとぞこの事は内密にお願い出来ませんでしょうか?」

事務長は平謝りに頭を下げてくる。

「……」

翔は腕組みをしたまま、機嫌が悪そうにしていたが、頭の中では計算していた。

(この個室は1日18万円すると言われているからな。入院期間は4日間と聞いているし……そうすると72万円を支払わずに済むと言うことか。別に金が無い訳じゃないが、部屋代を無料にしてくれると言うなら、それに越した事は無いしな)

「分かりました。では口外はしませんが……あの看護師を何とかして下さい。いっそ精神鑑定を受けさせた方がいいかもしれないですよ?」

「は、はい。正に仰る通りです! 今、本人もかなり興奮気味の為、取りあえず鎮静剤を打っておきましたので、今夜は安心してお休み下さい」

「ええ、是非そう願いたいものですね」

何処までも無愛想な態度を取る翔に修也は声をかけた。

「翔、もうこの辺で終わりにした方がいいよ。先方も、高額な個室代を無料にしてくれるとまで言ってくれているんだから。それに実は今日は大事な話が合って僕は翔の所へ来たんだよ」

「え? 大事な話?」

翔は眉を顰めた。

「うん。だけど、これは会社の内々の話だから……」

言いながら修也はチラリと事務長の方を見た。

「あ、あの……そ、それでは私は下がらせていただきますね」

そして事務長はそそくさと立去り、部屋には翔と修也の2人きりになった。

「全くあの看護師め……。だが修也、お前が来てくれて助かったよ。ありがとう」

「いや。あれ位大したこと無いから、お礼なんていいよ。それより……」

修也は何処か落ち着きなく、ソワソワしている。

(どうしたんだ? 修也の奴。いつも落ち着いているくせに会社で何かあったのか?)

「修也、大事な話があるって言っただろう? 一体どう言った内容の話なんだ?」

「それが、実は今日携帯に直々に電話がかかってきたんだ
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